金属有機構造体(MOF)理科の散歩道No.1028
対応自在 夢の材料Metal-Organic Framework
京都大学の北川進博士が 「金属有機構造
体 (MOF) による新しい分子構造設計と
多孔性材料の開発」によりノーベル化学賞
を受賞し、 10日に授賞式がありました。
MOFは、金属と有機高分子が持つ性質
を「いいとこ取り」した素材です。 またど
の金属、どの高分子を使い組み合わせるか
で、性質を自由に設計できる材料です。
MOFは、多孔性配位高分子でもありま
す。
多孔性ですからたくさんの空洞があり
ます。 そして、 高分子に金属イオンが配位
結合で結ばれ形成されたものが、 配位高分
子です。 金属イオンと高分子が規則正しく
結びつき、分子レベルでレゴブロックのよ
うに、立体的な骨組みを持つ物質です。
無数の穴は顕微鏡でも見えないほど小さ
いですが、それが膨大な表面積を生み出し
ます。 1でサッカーコート数面分もの表
面積を持つこともあります。 表面積が大き
な物質では活性炭やシリカゲルがあり、 に
おいや水分を吸着する性質から脱臭剤や乾
燥剤として使われています。
このMOFの穴は、二酸化炭素や水素や
メタン、 有害ガス、治療薬などさまざまな
物質を選択的に吸着できます。 これを用い
て二酸化炭素の回収や貯蔵ができれば、 地
球温暖化対策につながり、 吸着した二酸化
炭素を取り出して有効活用できる可能性も
あります。
水素やメタンを効率的にためる研究も進
んでおり、 次世代のクリーン燃料を支える
可能性もあります。 有害ガスを吸着して空
気を浄化することもできます。 医療では薬
を内部に閉じ込めて患部に運び、そこで少
しずつ放出するドラッグデリバリーも可能
になります。
化学は多くの新物質を創り出しました。
全てが有用ではなく環境破壊の原因ともな
りましたが、 解決するのも化学の力です。
(マレーシア国立マラヤ大学 栗岡誠司)